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おすすめ人 この1冊 こんな本です
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2025.7.31


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出版禁止
長江俊和/著
新潮社

今回はTVディレクター、ドラマ演出家でもある長江俊和さんの“禁止シリーズ”第1作目となる作品を紹介します。

著者である長江さんの手元に回ってきた「カミュの刺客」というタイトルの原稿。
若橋というライターが書いたもので、出版禁止となったルポルタージュだった。
ルポの題材は「心中」。
若橋がライターになるきっかけともなった人気ドキュメンタリー作家の熊切が、愛人である新藤七緒と心中し、七緒だけが一命を取り留めた。
人気絶頂の中、熊切はなぜ死を選んだのか?本当に心中なのか?
7年もの間、真相を追い続けていた若橋は、長年沈黙を貫いていた七緒のインタビューを取り付けることに成功したが、彼女の話は当時の報道や警察からの聞き取りと変わらない。
やはり心中だったのか…と思う中で、若橋と七緒の関係は思わぬ方向へ変わっていく…

現代の「心中」は“訳あり男女”というより、家族や夫婦の無理心中ニュースを見かけることが多い気がします。
添い遂げることができないのであれば一緒に死ぬしか選択肢はない。と思うほどの恋愛なんてあるのか?…私も若橋と同じ意見です。
だからこそ若橋は熊切と七緒の心中は偽りで、殺人ではないかと疑い続けたわけですが、熊切が最後のメッセージや自殺する際の動画を撮っていたので、若橋も読者も“自殺説”に心が傾きます。
しかし、あることがきっかけで明かされていく真相と結末は、いい意味で“騙された感”があって、思わずページを戻してしまいました。
初めはミステリーなのですが後半はサスペンスになり、結果的にイヤミス作品と呼べる内容で、とても刺激的です。

最近、小説でも映画でも“モキュメンタリー作品”(虚構の物語をドキュメンタリー風に演出する手法)が流行っていますが、長江俊和さんはブームになる前からこういった作品を手掛けていて、他にも「掲載禁止」など、禁止シリーズは6作品出ているので、この作品が気に入った方は是非読破してみてください。

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