社員が選ぶ 最近読んだ1冊 NO.235

おすすめ人 この1冊 こんな本です
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2019.6.26


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「初恋」

吉村達也/著

角川ホラー文庫

30歳にして、出世の速さも体型も平均的な出来栄え。
地味でも派手でもない‟洗濯洗剤のCM”に出てきそうな家庭的な女性と職場結婚し、通勤に2時間かかるマイホームを手に入れた三宅は、「幸せは中くらいがいい。」と、今の暮らしに‟これ以上望むものはない。”と思っていた。

ところが、そんな幸せに満ちた暮らしは、ある女性との再会で恐ろしい方向へと転がっていった。

中学生の時に軽い気持ちで一度だけキスをした同級生。
彼は途中で転校していった彼女のことなどすっかり忘れていたが、彼女は16年間ずっと三宅のことを想い続けていた。
隠し撮りしたフォトブックを作っていたり、等身大にした彼の写真にキスをしていたり…
そんな尋常ではない彼女が、あることがきっかけで彼の前に姿を現し、悪びれることなく、誰もが凍り付くような行動を起こしていく。

初恋の甘い想い、もどかしい片想いは、大人になるにつれて心が歪んでいき、それが憎しみに変わった時の「狂気」。
狂いすぎていて思わず笑ってしまう描写もありましたが、「最後はそうしたか…」と、なんとも後味の悪い終わり方でした。

今では「ストーカー」という言葉は当り前に使われており、この手の犯罪の少なくはありませんが、1993年に発行されたこの作品は、その時代ではとても衝撃的で、‟こんな異常者が世の中にいるのだろうか?”と思ったものです。

ゴミを漁られ、隠し撮りされ、生活の何もかもを把握されていただなんて信じたくない話ですが、もしかしたら、知らない間にそうされている被害者が実際どこかにいるかもしれませんね…

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