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おすすめ人 この1冊 こんな本です
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2016.5.13


「地のはてから」

乃南アサ/著

講談社
北海道の知床半島。以前、女の二人旅、電車で冬の北海道を巡るのに、「知床半島は電車がないので車がないと行けないよ、ひたすら自然にあふれた冬はとても厳しい土地だ」と言われ、魅力的に感じたものの断念した話を聞いたことがあります。

現代ですらそんな知床半島。ここに、大正時代初期に故郷を追われ逃げるように移住してきた家族がたくさんいました。その中の娘「とわ」の生涯を描いた物語です。

北海道の開拓移民の話は今までにも聞いたことがありますが、大正時代に知床半島まで移民が入っていたことは知らず、その過酷さにとても感じ入る小説でした。

作品中、とても気になったのは先住民のアイヌ民族のことです。知床は、アイヌ語で「地の果て」という意味だそうです。”とわ”はアイヌの三吉に恋をします。が、叶わぬまま結婚。そして第二次世界大戦中に思わぬ再会をします。アイヌの方たちは、国策で来た開拓民に自らの土地や家を奪われ、蔑まれて生きていきました。それでも同じように籍を与えられ、戦争に召集されて行きます。作品中の三吉の描かれ方にとても心惹かれました。

また、”とわ”の生き方。困難に継ぐ困難。イナゴで畑が全滅、奉公先の倒産による解雇、父の自殺、二度目の父は火事での焼死、甲斐性のない夫、戦時中の火災による家の消失、息子の焼死、これでもかこれでもかと困難に襲われます。生き続けるしか選択肢がない。ひたすら家族のために、子供たちのために生きる算段を見つけ出していきます。

「いつのころからだろう、どんな話をするときにでも、とわは何となく微笑んでいられる自分を感じるようになった。もはや大概のことには動じなくなったということかもしれない。(中略)せめて深呼吸の一つでもして、あとは時をやり過ごす。そんなときには、笑っているより他、出来ることもないと思う。だから何となく笑うようになったのかもしれない。」すごい境地だと思います。

しんどく重い内容の本ですが、読後感が爽やかな本でした。乃南アサさんのわかりやすく読みやすい文体なので、先が気になって、上下本を一気に休みなく読んでしまったほどでした。

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